ティーン・ザ・ロック



えへらっ とぎこちなく微笑んで見せると、女の子は満足そうに白い歯を見せて笑った。



「ねぇ、あなた 外部受験した人でしょ?」


「う…うんっ」


「やっぱりっ!こんなに可愛い子見かけた事無かったから。

ねぇ、お友達になりましょ?」


「えッ…!?う…うんっ。あたしで良ければ、是非…」


お世辞だと分かっていても、可愛いと言われて嬉しくない筈がない。


それに、ここにきて初めてできた友達だ。ちょっと気は強そうな感じもするけれど、知らない人の中に一人っきりになるよりかは確実に良かった。



「そう…嬉しい!じゃあ、後でアドレス交換しよーね」


「うん」



「私、夏目 紅葉(ナツメ モミジ)。小等部からここの学校に居るの。

みんな紅葉って呼ぶから、貴方も名前で呼んでね?」


「う…うん。えと…あたしは逢坂 葉瑠。あたしの事も名前で呼んでね」


「葉瑠、ね!可愛い名前!」



肩をすくめて、顔を右に傾ける仕草をする紅葉。


貴方の方がよっぽど可愛いよ とは、あまりに恥ずかしくて言えなかった。




体育館に着き、A組から順に入場。



都心のものとは思えない広さの体育館には、全5クラス 総勢150人の一年生とその保護者達がすっぽりと収まった。



その後は長ったらしい式の始まりだ。



校長の祝辞は30分にも渡ったし、来賓代表の挨拶はお経の様で眠りそうになった。


暇を持て余して、大きな花瓶に花は何本飾られているかを数えたりもしたけれど…。


ただ、体育館がざわついた瞬間もあった。



それは理事長の登場場面だった。



ステージに上がる途中や話をしている最中にもシャッター音が鳴りやむ事は無く


退場の際に階段を踏み外しそうになった場面は、今日一番のシャッターチャンスだったらしい。



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