ティーン・ザ・ロック
隣に居た紅葉がこっそりと耳打ちをしてくれた。
「あの理事長、ダンディでしょ?だから保護者にコアなファンクラブみたいなのが出来てるらしいんだ」
「…凄いね…」
…確かに、背も手足も長くて 芸能人に居そうな位カッコいいけれど
ファンクラブが付く程とは驚きだ。やっぱりこの学校は何かが違うのかもしれない。
そして、式の方は校歌斉唱によって幕を下ろした。音程が分からないあたしにはとても長い3分間だった。
退場の際に、三脚からビデオを回す優さんを見つけてこっそりと笑いかけ
そのまま体育館から出たあたし達は、列のままぞろぞろと教室に戻る。
担任の先生が来るまでは静かに待機だと式の前に説明されていたのだが、教室には生徒だけとなり、もう、やりたい放題だった。
隣の席の男子はどこかへ行ってしまったし、後ろに居る筈の紅葉の姿も無く
既にグループのできている女の子集団の中に入って行く度胸も無いあたしは、ただ机に向かって座っているだけだった。
せめてもう少し後ろの席ならなぁ…。どの人があぶれているのか分かるのに。
逢坂の前に“相田”さんとか居なかったのかな。
…なんて、どうにもならない事を考えていると
「葉瑠ー!」
紅葉が他の友達2人と一緒にあたしの周りに来てくれた。
「あのね、私の友達紹介するね」
「うちは奈津。宜しくね」
「私は冬華ー」
「二人も葉瑠と友達になりたいんだってー!良いよね?」
「うん、勿論!」
みんな大人っぽくって、髪だって染めてて。
メイクすらしていないあたしが何故?とも思ったけど、何だかみんな優しく話しかけてくるから、そんな疑問もすぐに吹き飛んだ。