ティーン・ザ・ロック
泣きながらうずくまり、両手で耳を塞ぐ。
そんな事をしても、この現実から逃れられる事なんてできないけど
そんなこと分かり切った事だけど
せめて、今だけでも目を反らしたかった。
…目を瞑ると、両親の顔が浮かんできて、とても幸せだった。
誕生日に父のくれたプレゼントを握りしめて、嬉しそうに笑っている母。
ケータイをせがむあたしを見ながら、困り果てた様に笑う父。
たまに怒る事もあったけど、思い出の殆どが笑顔で溢れている両親を思い出すと
益々涙があふれて来る。
暫くの間、両親と過ごした記憶を思い起こし、つかの間の幸せに浸った。
そのおかげで落ち着いたのか、涙も勢いを失っている。
ゆっくりと目を開けると
兄が、滴り落ちる涙を拭おうともせず、優しい顔であたしを見つめていた。
「ぉ…にぃちゃ……」
「葉瑠…。明日、学校休めよ。
近くの病院に遺体を運んでくれるって言ってたから、会いに行こうな…。
じゃあ、飯にすっか!
飯食って、ちょっとでも体力付けないと。これからが大変なんだからさ」
ぽんぽん と、二回頭を撫でて。
それから兄は、キッチンへと歩いて行った。
暗かった部屋に、柔らかい光が射した。