ティーン・ザ・ロック
「おーおー。誉めてやるから名前を言いなさい」
担任は、こういう展開になると想像がついていたのだろうか。手慣れた様子で紅葉の暴挙を受け流す。
「センセ、私に興味がおありですかー?
えっとぉー。夏目 紅葉と言いますー。
見た目はチャラいけど、好きな男の子には一途で…好きなタイプは…」
そこまで言った時、担任からの鋭いジョブが。
「…“夏目”~?
お前なぁ、勝手に席交換しただろー!お前の席は“大野”の席だっ!!」
「あれっ?バレたー?サーセーンッ」
ここで本日最大の爆笑。
みんな紅葉と先生との掛け合いを楽しそうに見つめていた。
凄いなー…。やっぱり、可愛い子が面白いこと言えるとモテるんだろうなー。
なんて、ピントのずれた疑問を抱いているのはあたしだけだろうけど。
紅葉は目が悪いから代わって貰った と、ありきたりな理由をこじつけて担任をねじ伏せた。
他の人へと自己紹介が移った時に、彼女はあたしにこっそりと耳打ちをしてくる。
「ホントはね、葉瑠と友達になりたくて…。だから席代わって貰っちゃったんだぁ」
顔を離した後、眩しそうに目を細める彼女を見て
自分が今男だったら、きっと一瞬で恋に落ちていただろう
そんな危ない事を考えてしまっていた。