ティーン・ザ・ロック
噂話
女子の情報網の広さと言ったら、きっとN○SAでも解明できない程だろう。
ありとあらゆる手段で噂は廻って来る。
大抵は
『誰と誰が付き合った』
とか
『別れた』
という事に焦点を置いている様だが、たまに、とんでもない情報が入ってきたりも。
そのひとつが、杉澤君の事だった。
入学して一月も経たない頃の昼休み、珍しく彼の名を呼ぶ声が教室に響いた。
「悠馬く~ん!ちょっと来てくれるーッ?」
声の主は、入口に居る男子生徒3人の中の一人だろう。
こっちを見てニヤニヤと嫌な笑みを浮かべている。
事情は知らずとも、好意的な呼び出しでは無い事くらいあたしにも分かった。
静まり返る教室に響く椅子の音。
杉澤君が席を立ち、呼ばれた方に向かう音だった。
みんな無言でその様子をただただ見守るだけ。
あたしも胸騒ぎはしたが、事情を知らないだけに強気で出られない。ましてや呼び出した相手が、派手な髪色をした不良なのだ。
下手に彼を庇いでもしたら、自分に被害が及ぶだけでなく
杉澤君にも迷惑をかけてしまいかねない。
見ているだけなのは辛かった。
でも、そうするしか、今のあたしには出来る事が無かったのだ。