ティーン・ザ・ロック
奈津は噂だと言ったが…。
もし、彼らの間に何かあったのだとしたら。
本当に杉澤君は関係が無くて、誰かに嵌められた上に
事件の前にあったという『何か』のせいで、彼は弁解の余地を与えてもらえない程恨まれ、停学にまでなったとも考えられる。
どうしても腑に落ちない点が幾つも散りばめられているが
だんだんと頭に靄(もや)がかかった様に、何も考えられなくなった。
それもそうだ。
これは『噂』なんだ。
違うかもしれないが、真実かもしれない。
どちらかがはっきりしないままでは、自分の中で結論付ける事など出来る筈がないんだ。
少しでも情報を、と思い、今度は紅葉に聞いてみる事にした。
さっきの話には一言も参加しなかった彼女。興味がないのか、関わりたくないのか。
分からないけど、それも聞いて確かめるしかない。
「紅葉…。良いかな?」
彼女の方に向き直ると、彼女にしては珍しく、沈んだ様な顔で机を見つめていた。
そして、声をかけた事を公開させるような眼差しであたしを見上げ
冷たい声ではっきりと、牽制ともとれる言葉を浴びせてくる。
「葉瑠。もう、杉澤の事はそれぐらいで良いんじゃない…?
関わったら絶対、後悔する事になるんだから」
勘違いかもしれない。でも…
あたしを心配しての言葉とは、どう考えても思えなかった。