ティーン・ザ・ロック
「葉瑠、風呂先に入ってきな。
俺、ちょっと叔父さんに電話するからさ」
「わかった…」
「入ってきたら、ちょっとアルバムから使える写真探しといてくんねぇ?」
「うん」
ニコリと笑ってあたしを見送ってくれた兄。
きっと今日は、寝るつもりはないだろう。
物凄く落ち込んでいる筈なのに、気丈に振る舞う姿が痛々しくて…。
あたしにも出来る事はきっとある。
頑張らなきゃ。
支えになってあげなきゃ。
そう、強く決心しながらシャワーのコックを捻った。
髪を拭きながらリビングに戻ると、兄はまだ電話口にいた。
「はい、そうなんです…。ええ、ニュースの。
…はい…。急ではあるんですが、明日…」
この口調からすると、きっと他の親戚だろう。
入ってきたあたしの姿を見つけ、顎でアルバムを指す。
分かってるよ、と口パクで言って
分厚いブックカバーを開いた。
写真の中の二人は、やっぱり笑顔で。
まだ少し、二人が居なくなってしまった事が信じられない位、生き生きとしていた。
兄は長い電話の後、疲れた様子であたしのとなりに腰かけてくる。
「今の、オヤジのイトコの恭介さん。
昔から涙もろい人だったけど、泣きながら思い出話されてちょっと戸惑った。
でも、やっぱり、皆オヤジたちの事好きだったんだなーって思ったら
なんか嬉しくなったよ。
で、よさそうなのは見つけたか?」
正月とお盆に見る、よく日に焼けて豪快な笑い方をする恭介さんを思い出してから
見つくろった写真を指で指し示した。