ティーン・ザ・ロック
ぴくぴくと痙攣しながら地面とお友達になった彼。あたしは申し訳ないのと恥ずかしいので一杯だった。
この一件で、周りを囲んでいた女子生徒が一瞬で散った事は言うまでも無いだろう。
取り合えず人目が少なくなった事に安堵し、盛大にため息を吐いた。
兄は大きく伸びをしてから、あたしの頭を小突く。
「葉瑠ー。変な男と一緒に居るんじゃねーよ」
「いやー…。ははは…」
ゴメン巧実君。“変な”と言う所で否定できなかったよ。
「ところで、何で雪さんがここに?」
少し離れた所でニコニコと傍観している雪さんに目を向けると、小さく手を振って『面白かったねー』などと言っている。
「俺一人だと道分かんねぇし。家に雪さんが居たから連れて来て貰った」
「そう…」
そのおかげで要らぬ恥をかいたのでは とは言える筈も無い。
取り合えずまだ倒れている巧実君を、並木の陰でビクビクとこちらの様子を伺っているクラスメイトに託して、あたし達は学校を離れた。
路駐していたセダンに乗り込み、そこでやっと気を抜く事が出来たのだった。
だが、この時のあたしはまだ知らない。
どんな手をつかってでも兄や雪さんをここに連れてくるべきでは無かった事を。
噂という物の怖さを、この身を持って体感する事になろうとは。
兄との再会を喜ぶあたしは、これっぽっちも気が付いていなかったんだ。