ティーン・ザ・ロック





家の中に入っても、兄のテンションの高さにはついて行けなかった。



珍しいものを発見しては『すげー』だの『かっけぇ』だのと一々反応し、あたしと雪さんを疲れさせる。



「もう、少し落ち着いてくれない?」



溜まらず文句を言うと



「いーだろ別にー!東京に来るのは初めてなんだしー」



反省するわけでも無く、そう言ってまた、きょろきょろと辺りを見回していた。



兄とあたしは同じ中学を卒業したが、修学旅行は行き先が違った。あたしは関東、兄は北海道。


そのせいもあるだろうが、今日の兄は明らかにテンションがおかしい。



現に今、50インチの大型テレビに頬ずりしているし。



こんな兄をどう扱えばいいのか。取扱説明書があったら迷わず手に入れてやる。




完全に腫れもの扱いになった兄。温厚でいつも笑顔の雪さんすら、今の兄には近づきたくないらしく



「ちょっと会社に忘れ物が…」


などと言って、一人で逃げて行く。




遠くの方で重量感たっぷりの扉が閉まる音を聞きながら雪さんを呪った。



「………」


「………」



……何故急に黙る。




相変わらずそわそわとしているが、それはどうやら、何かを話そうとしているから らしい。




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