ハルジオン。
視線を小川に戻す。

音もなく流れる川の底で、チラチラと魚が翻る影が見えた。

「消えるなら……」

少しの沈黙の後、白い顔をしたアキトが唇を振るわせた。

「僕が消えればいいんだ」

「……」

「早く大人になって、遠くに行って……なんなら……死んだっていいんだ」

「……ふんッ」

達也はしかめっ面で鼻を鳴らし、足元に落ちていたドングリをアキトの額めがけて投げつけた。

「痛てッ……何すんだよ!」

「辛気くせぇ」

「ッ!!」

アキトがキッと達也を睨む。達也は構わず続けた。

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