ハルジオン。
この町では、梅雨時になると無数の蛍が姿を見せる。
全国的にすっかり数が減ってきたと言うニュースをたまに見かけるが、この町にはいまなおたくさんの蛍が川や田や池に住み着いていた。
「水が綺麗なのよ」
と百合子が言っていたことを思い出す。
夜が更け、人々が寝静まった頃、彼らはどこからともなく舞い上がり、短い命を賭して幻想的な世界を創り出す。
ふわり、
またふわりと。
一つだった灯りは二つとなり、二つは三つとなり。
まるで足元の露草から沸き立つように、螢は次々と夜空に舞い上がった。
その淡い光に目を細める。
達也は無言のまま、葉桜となった桜並木の土手を無数の蛍とともに歩いた。
全国的にすっかり数が減ってきたと言うニュースをたまに見かけるが、この町にはいまなおたくさんの蛍が川や田や池に住み着いていた。
「水が綺麗なのよ」
と百合子が言っていたことを思い出す。
夜が更け、人々が寝静まった頃、彼らはどこからともなく舞い上がり、短い命を賭して幻想的な世界を創り出す。
ふわり、
またふわりと。
一つだった灯りは二つとなり、二つは三つとなり。
まるで足元の露草から沸き立つように、螢は次々と夜空に舞い上がった。
その淡い光に目を細める。
達也は無言のまま、葉桜となった桜並木の土手を無数の蛍とともに歩いた。