ハルジオン。
――翌朝、

鉛のように重たい頭を起こすと、翔の姿はどこにも見あたらなかった。

生きている。

それが何より不思議だった。と同時に、翔の安否が気になった。

時計を見る。

シフトの時間はとうに過ぎている。

慌てて携帯を手にしたとき、挟まれていた紙が床に落ちた。

『仕事に行ってくる』

几帳面な翔の字で、そう書かれていた。

「……良かった」

百合子はドサッと腰を落とし、携帯をベッドに放り投げた。

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