ハルジオン。
「……はあ」

百合子は八坂神社の山車小屋に体を預けながら、深々と息を吐き出した。

携帯を開く。

約束の時間まで三十分以上もある。

靖之の姿もまだ見えない。

――ブー、ブーッ

また携帯が鳴っている。

翔だ。

あれ以来、彼はますます百合子に精神的に寄り掛かるようになっていた。

嫉妬深くもなった。

少しでも別のことを考えていれば、目尻を釣り上げて叩かれた。

かと思えば、突然手のひらを返したように百合子にすがりつき泣きむせぶのだ。

限界だった。

このままでは、二人とも壊れてしまう。

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