ハルジオン。
「俺は、もう長くはないんだ」

森の中で旅人は言った。

「どういう事?」

アキトが首を傾げる。

長くない、の意味が分からなかったのだ。

「病気なのさ。ガンって分かるか?不治の病と言ってね、治らないんだ」

「そんな……」

アキトは胸が張り裂けそうなほど傷むのを感じた。

あんな気持ちは初めてだった。

「死んじゃうの?」

「ああ」

アキトの頭を撫でる旅人の表情は、なぜか涼やかだった。

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