ハルジオン。
(二)
(二)
達也の母・逸子は、達也が四歳の時に大腸癌を患い、入院後三ヶ月で他界した。
進行癌。
発見された時にはもう、手の施しようがなかったらしい。
父の篤史は当時商社に勤務し、年中忙しく世界を飛び回っていた。
当たり前のように逸子が入院した時も、危篤に陥った時も、病室に父の姿はなかった。
「まるで母子家庭ね」
それが逸子の口癖だった。
夕日を背にため息をついては、小さい達也にニコリと微笑んでみせる母。そんなワンシーンだけが、未だになぜか脳裏に焼き付いている。
達也の母・逸子は、達也が四歳の時に大腸癌を患い、入院後三ヶ月で他界した。
進行癌。
発見された時にはもう、手の施しようがなかったらしい。
父の篤史は当時商社に勤務し、年中忙しく世界を飛び回っていた。
当たり前のように逸子が入院した時も、危篤に陥った時も、病室に父の姿はなかった。
「まるで母子家庭ね」
それが逸子の口癖だった。
夕日を背にため息をついては、小さい達也にニコリと微笑んでみせる母。そんなワンシーンだけが、未だになぜか脳裏に焼き付いている。