ハルジオン。
何度目を擦り瞬きしてみても、泉を囲む螢の灯は、間違いなくさっきの場所から移動していた。

けして速くはない。

むしろゆっくりと、まるで森を彷徨うかのように動いている。

あり得ない光景だった。

「そんな……」

「なるほど。どうりでたどり着けないわけだ。あれじゃいくらテープで木に目印を付けたって意味がない」

……参った。

達也はため息混じりに首を振った。

あんなモノ、空でも飛んでいかない限り絶対にたどり着けるわけが……

「……空」

達也の脳裏に、ふと突拍子もない発想が浮かんだ。

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