ハルジオン。
山肌を伝う白い筋が見える。

……水?

そう思った途端、達也はすぐにその音の正体が何であるかを悟った。

慌てて目線を真下に移す。

薄暗闇の中に、無数に広がる波紋がユラリと揺れて見えた。

「滝壷!」

これが……螢の泉。

確信すると同時に、達也はぐったりとしたアキトの華奢な体をかき抱いた。

水面に二人の黒い影が映り、急速に大きくなっていく。

「突っ込む!」

達也は声を荒げて息を吸い込み、咄嗟に全身を硬直させた。

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