ハルジオン。
――ザンッ!!

滝壷に激しい水柱が立つ。

と同時に、透きとおったしぶきの粒が、螢の淡い光に乱反射し、砕けた水晶のようにキラキラと舞い上がった。


数秒の後、水面に広がった波紋がひとしきり落ち着いたかと思うと、

「ぶはッ!!」

達也が滝壷から顔を出し、アキトの体を水中から引き上げた。

「アキト!……おい!」

両足を器用に動かし、水中でバランスを取りながら、アキトの頬を手で叩く。

「アキト!」

「…………ん……」

何度目かの呼びかけで、ようやくアキトが意識を取り戻し、瞼を開いた。

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