ハルジオン。
ぼんやりとした顔で今の自分の状況を見渡したアキトは、一言、

「……生きてる」

と呟いた。

「ここは……?」

「螢の泉さ」

「……螢の……」

達也につられて見上げると、折り重なりあう木々の合間を縫うように、無数の螢が揺らめいていた。

「……本当に来たんだ」

「ああ」

達也は微笑み、「泳げるか?」と言って、数メートル離れた岩場を顎で指した。

「うん」

体を捻り、平泳ぎで岩場を目指す。

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