ハルジオン。
しぶきに濡れた岩肌には、所々に苔や山草が生え揃い、その周りで無数の螢が唄うように揺れている。

滝水はどこまでも透きとおっていて、わずかな月明かりさえもが、滝壷の奥深くを照らし出していた。

「ぶしっ!」

アキトがくしゃみを溢す。

「大丈夫か?」

「うん」

アキトは肩を抱き、両腕をさすった。

「……見ろ!」

目線よりも少し高い雑木。

背の高い杉の木が林立する森の奥に何かを見つけた達也が、囁くような声でその肩を揺すった。

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