ハルジオン。
人にはさんざん説教しておきながら、自分のことは棚に上げたまま。

願い事だなどと聞いて呆れる。

――そうさ、

俺には、願い事なんていらない。

言えと言われて初めて分かった。俺は誰かに何かを願わなければならないほど、そんな不幸は背負い込んじゃいないんだと。これまでも、これからも、俺は俺らしく自分の人生を生きていく。それでいい。

達也は心の中で呟いた。

ただ一つ気掛かりなのは、隣にいるアキトのことだった。

アキトはまだ幼い。

この森での願い事が、これからの人生に必ず大きく影響するだろう。

だから、

どうか神様……

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