ハルジオン。
「まあ、いろいろあったがよ、お前のことは忘れねーよ」

「……」

「……どうした?」

覗き込む達也から目線を逸らし、アキトは寂しそうに首を振った。

「……無理なんだ」

「何が?」

「旅人が言ってた。一度螢の泉にたどり着いた者は、その日の森での記憶が全部消えちゃうんだ」

「……何だって?」

達也が聞き返す。

驚きを隠せなかった。

なぜ?

なぜそんなことになるのか、達也にはまったく意味が分からなかった。

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