ハルジオン。
「……待てよ」

「……」

二歩三歩と下がりながら、無言ではらはらと首を振る。

「どこ行くんだよ?待てって!」

「さよなら」

伸ばした達也の手を見つめ、アキトがぎゅっと瞳を閉じる。

その瞳から、大粒の涙がボロボロとこぼれ落ちた。

カクンと膝の力が抜ける。

螢の光のせいか、体に力が入らない。

畜生……

ちくしょう……

「畜生がっ!俺は忘れねーからな!」

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