ハルジオン。
地面に転がった薩摩芋が、達也のつま先に当たって止まった。

それを拾い上げ、赤茶色に焦げた端を掴んで半分に割る。

――これは、夢?

なのに、焼き芋を持つ手は熱く、ほっこりとした匂いが達也の鼻孔をくすぐった。

『ほらよ』

声にならない声を発し、焼き芋を"自分"に手渡す。

「ありがとう!」

屈託のない笑顔でぺこりとお辞儀をし、母の元へと走っていく"自分"。

なんとも言えない心境のまま、達也はその小さな後ろ姿を目で追った。

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