ハルジオン。
「見て!」

「あら、美味しそうね」

「……どうしたの?ママ」

逸子と"自分"の会話が、かすかに達也の耳に届く。

母さんが、そこに居る。

『母さん!』

達也は叫びそうになった。

駆け寄りたかった。


母さん……

母さんが死んでからいろいろあったんだ。

親父が仕事辞めて、ダメになって、僕を何度も殴りつけて。

新しいランドセルも、服も、靴も、何一つ買ってもらえなかった。

< 222 / 339 >

この作品をシェア

pagetop