ハルジオン。
気が付くと、達也は棒きれを手に、じっと逸子を見つめていた。

逸子が幼い"自分"の頭を撫でている。

何度も何度も。

その表情がとても幸せそうで、今にも涙が溢れそうだった。

『母さん……』

震える心で母を呼ぶ。

とその時、

逸子が顔を上げ、こちらを見た。

目と目が合う。

その瞬間、達也は心臓を鷲掴みにされたような衝撃を覚えた。

母は、微笑んでいた。

『母さん……』

呟いた途端、達也の中の何かが、堰を切ったように溢れ出した。

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