ハルジオン。
――リ、リリ……



微かな虫の音と土の匂いの中、達也は再び意識を取り戻した。

愛染窟の湿った地面に手を突き、上半身を起こす。

「う……」

痺れる頭を押さえつける。

今度も夢か?それとも……

達也は洞窟の中を眺め、どうやら今度こそ現実らしいとあたりを付けた。

しみ出た水滴に濡れる壁にもたれ掛かり、長い息を吐き出す。

夢を見ていた。

長い長い夢だ。

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