ハルジオン。
「……よし」

声を掛け、息を整える。

今から歩いて行けば、ちょうど約束の七時五分前には八坂神社に着くことができる。

「時間だ」

意を決して踵を返し、扉に向かう。

丁寧に掃除された板張りの床を踏みしめるたびに、コツ、コツと乱れのない靴音が広い部屋に響く。

「お出かけですか?」

「うん」

部屋を出るなり駆け寄ってきた使用人に笑顔で答え、玄関に向かう。

その手には、とても美しく香りのよい花束が握られていた。

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