ハルジオン。
軽いはずの足取りがひどく重い。

……今さら何を躊躇うの?

今日こそ思いをぶつけるんだって、そう決めたはずじゃないか。

靖之は一抱えもある大きな花束を見つめ、さっき鏡の前で見た情けない自分の顔を思い起こした。

「ゆりちゃん」

小学生の頃からずっと、密かに胸の中で想い続けてきた百合子の名を呟き、口元を引き締める。

「お気を付けて」

「うん」

「お帰りは?」

「今日中には帰るよ」

玄関先で丁寧にお辞儀をする使用人に手を振り、靖之は自宅の門を出た。

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