ハルジオン。
それなのに、達也は百合子を残してこの町を出た。

もう二年も前のことだ。

靖之は頭が良かった。

大学に進学することも十分可能だった。

でも、敢えて地元の町役場に就職し、汗を流して働く道を選んだ。

周りは大いに不思議がり、もったいないと口をそろえて噂したが、靖之は全く意に介さなかった。

靖之はこの街が好きだった。

百合子と達也、二人に出会えたこの街がたまらなく愛おしかった。

それに、

百合子の傍に居たかった。

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