ハルジオン。
「……嘘だろ?」

「ん」

靖之は無言で首を振った。

「初めてたっちゃんの家に行った時に確信したよ。この人だって」

「嘘……」

あまりに予期せぬ展開に、達也と百合子は絶句した。

「オジサンは僕のことを忘れていたよ。でもね、それはつまり、オジサンが螢の泉にたどり着いた証拠なんだ」

靖之は視線を宙に漂わせた。

濃紺色の空に、カシオペヤの五つ星が浮かんでいる。

「感謝してるんだ」

そのままポツリと呟く。

「僕を、こうしてたっちゃんと引き合わせてくれたんだからね」

< 279 / 339 >

この作品をシェア

pagetop