ハルジオン。
靖之はズボンのポケットから四角い何かを取り出した。

「それは?」

「僕の宝物だよ」

「……トランプ?」

百合子が靖之の手元を覗き込む。

「うん。昨日のタイムカプセルから出てきたんだ。昔母さんに買ってもらった物でさ、ずっと肌身離さず持ってた」

「……!!」

夜空に透かすように靖之が取り出したそのトランプを見た途端、また達也の心臓がザワリと騒いだ。


「一枚欠けてるんだけどね」

と言う靖之の言葉が、そのざわめきに拍車を掛ける。

< 280 / 339 >

この作品をシェア

pagetop