ハルジオン。
「それは?」

靖之が身を乗り出す。

「たっちゃんが出て行ったあと、郵便受けで見つけたの」

「……え?」

達也は涙で濡れた顔を上げ、差出人の名前を見た。

――宮沢房子

その名字に心当たりがあった。

「母さんの旧姓だ」

「やっぱり……」

達也の隣りに腰を下ろし、百合子が封筒の腹にそっと触れた。

「貸して」

封筒を受け取り、封を切る。

中には二枚の便せんが入っていて、近況やら達也のことを気遣う言葉が、とても丁寧な字で書き連ねられていた。

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