ハルジオン。
「まったくよ」と達也はもう一度吐き捨てた。

煙草に火を付け、ジーンズの裾に絡みついた草を指ではじき飛ばす。

小学生の頃、良くこのあぜ道を走って神社に行った。

いつも「あいつら」が一緒だった。

中学に上がってからはほとんど通らなくなった。それがまさか大人になって通るとはね、と苦笑いの一つもしたくなる。

時計を見る。
あと十分。

達也はゆるりと煙を吐き出した。自分の律儀さが馬鹿らしくなる。あんな約束など反故にしてしまえば良かったのだ。

「何やってんだ俺は」

くそったれがと呟いて川下に視線を落とす。

遠くに橋が見える。何の変哲もない小さな橋だ。達也は不意に、「あの日」かいだ列車の匂いを思い出した。
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