ハルジオン。
二人はすぐに郵便局員に教えてもらった坂道にたどり着いた。

「あれじゃない?」

「どこ?」

「蔵の向こう」

「蔵?」

達也がヒョイと背伸びする。

緩い坂道の両脇には、瓦屋根の大きな門を構えた家が数軒並んでいて、そのどれもが庄屋のような蔵を抱えている。

「間違いないわ。だって、青い屋根瓦って言ってたもの」

坂道を歩きながら、百合子がワンピースの裾を翻す。

「楽しみね」

「そうかな」

達也は子供のようにはしゃぐ百合子に苦笑いを浮かべて足元を見た。

舗装の隙間から生えた雑草に躓きそうになるのだ。

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