ハルジオン。
「……着いた」

二人は広い庭の前に立ち、ゆったりとしたたたずまいの軒先を見上げた。

「たっちゃん」

「ああ」

達也は宮沢と書かれた表札を確認し、小さく咳払いして門をくぐった。

チャイムを鳴らしてしばし待つ。

思いのほか、心臓がドキドキと脈打っているのが分かった。

ところが、いくら待っても返事がない。

もう一度チャイムを鳴らす。

足元で雀が何かをついばんでいる。

達也は百合子と顔を見合わせ、横手の縁側に回ってみた。

「……誰か居ませんか?」

「……」

やはり人の気配はない。

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