ハルジオン。
「気付いてたんでしょ?あの日、潜水橋でたっちゃんの列車を見送ってた」

今度は無言で頷く。

忘れるはずがなかった。

田植えも始まらないあぜ道、

水晶のような燐光を放つ鮎喰川、

欄干のない潜水橋の上で、百合子のセーラー服が揺れていた。

「たっちゃんも相変わらずね」

百合子は可笑しそうに笑った。

「そうか?」

「そうよ」

水たまりのできた足元に視線を落とし、二人は夜の神社をゆっくりと歩いた。

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