ハルジオン。
ちょうどその時、寺の鐘が鳴り響いた。

「やきいも!」

突然達也が目を輝かした。

「焼き芋?」

篤史が聞き返す。

「うん。ママとお散歩しててもらったの。階段がいっぱいあるところ」

「……そうか」

篤史が達也の頭を撫でていると、不意に達也が顔を上げた。


「ママはまだ寝てるの?」


「……」

篤史は何も言えず、ジッと堪えるように瞳を閉じた。

四歳になったばかりの子供に、母親の死を理解できようはずもない。

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