ハルジオン。
逸子の両親と目が会う。

門の陰でボロボロと涙を流している義母とは対照的に、義父は眉間に皺を寄せ、黙って腕を組んでいた。


「それじゃあ……」

頼みます。

と表情を隠し、深々と頭を下げる。

「パパ」

足元で達也の声がした。

篤史はそれを振り切るように背を向けた。

「……パパ?」

心細そうな声が着いてくる。

歩きかけた篤史の足が一瞬止まる。

「いつ帰ってくるの?」

屈託ない達也の問いに、篤史は再び歩きだした。

「……パパ」

一歩ずつ離れていく父の背中に、達也が砂利道を蹴って走り出す。

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