ハルジオン。
「パパ、ねえパパってば」

今にも夕陽に溶けてしまいそうな父の後ろ姿を追いかけながら、達也は何度も呼びかけた。

握りしめたメンコもクシャクシャになっていた。

「タツ君!」

その小さな背中を房子が捕まえる。

「イヤッ!!」

達也は必死で腕を振りほどき、長々と伸びる父の影を追いかけた。

「パパ、パパ!」

「達也!」

祖父の太い声が背中に聞こえる。

それでも達也は足を止めなかった。

「パパ!」

「来るな!!」

篤史が吠えるように怒鳴った。

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