ハルジオン。
……ごめん。

ごめんな、達也……

篤史は口の中で何度も呟き、耳を塞いでまた歩き出した。


「待って!パパ待ってよ!」

「タツ……やめろ」

ギリと歯を食いしばり、坂道を足早に下りていく。

「僕も一緒に行くよ!」

「ダメだ!」

篤史は溢れ出る涙を拭おうともせず、大股で歩いた。

「パパ、パパ」

その背中を達也が必死で追いかける。

とその時、

「あ!」

短い悲鳴の後、道端の雑草に足を取られた達也が前のめりに躓いた。

手からお守りが転がり落ちる。


「パパ!ねえ、今度いつ返ってくるの?ねえ?パパ!!」

達也はそれを握りしめ、ボロボロと涙をこぼしながら父を呼び続けた。

< 325 / 339 >

この作品をシェア

pagetop