ハルジオン。
あの日、達也が父親と過ごしたこの町を捨てたあの日、町の少し外れにある駅に向かって歩く途中、連なる多紀連山の稜線に舞い上がったトビが螺旋を描いて鳴いていたことを覚えている。
もうこんな光景も見ることはないのだろうと思った。
同時に百合子の顔が脳裏をよぎった。
それと、靖之の顔も。
「あいつら」とはいつも一緒だった。だからこそ、達也は何も告げずに列車に乗り込んだ。そのはずだった。
「……許せ」
達也は少しずつ速度を上げていく列車の窓に額を押しつけ、遠ざかる潜水橋の人影を見つめていた。
赤錆びたトラス(鉄橋の骨組み)が横切っていくその向こうで、セーラー服のスカートが揺れていた。
もうこんな光景も見ることはないのだろうと思った。
同時に百合子の顔が脳裏をよぎった。
それと、靖之の顔も。
「あいつら」とはいつも一緒だった。だからこそ、達也は何も告げずに列車に乗り込んだ。そのはずだった。
「……許せ」
達也は少しずつ速度を上げていく列車の窓に額を押しつけ、遠ざかる潜水橋の人影を見つめていた。
赤錆びたトラス(鉄橋の骨組み)が横切っていくその向こうで、セーラー服のスカートが揺れていた。