ハルジオン。
よりにもよって、こんな写真を見せつけられるとは思いもしなかった。

「ちッ」

苛立たしげに舌打ちする。

案の定、頭の中に昔の記憶が蘇り、十年以上暮らしてきたあのカビ臭い家の匂いが、達也の鼻孔の奥でツンと疼いた。


* * *


『綺麗だろ?お前の母さん』

父が薄汚い居間の本棚からアルバムを引っ張り出すと、そこには家族三人で撮った写真が一枚だけあった。

一才くらいの自分と、その左右で微笑む父と母の姿だ。

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