ハルジオン。
あの日以来、父とはまったく口をきかなくなった。

百合子とも距離を取った。

性欲の対象として彼女を見てしまいそうになる自分が堪らなく嫌だった。

百合子は何も言わなかった。

二人が付き合っていたわけではなく、父の一方的な思いであったらしいことは、二人を見ていれば察しは付いた。

だから何だというのか。

今思えば、篤史が逝った朝に町を出ようと決意したのも、百合子から離れたかったからなのかも知れない。

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