ハルジオン。
「……無理せんでええ」

朱色に馴染んだ羊雲を眺め、住職がぽつりと呟いた。

「え?」

「こんなに痩せてしもうて。ご主人は知っとるのか?」

「……ううん」

逸子が力なく首を振る。

出張族の夫とは、結婚してからの七年間すれ違いっぱなしだった。

達也が生まれた時ですら、篤史はインドネシアに出張に出たまま、一週間も帰ってこなかったのだ。

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