ハルジオン。
たまに帰って来ても、短い仮眠を取って出て行くだけ。

逸子の変化に気付くはずもない。

「いつでもええ……無理だと思たらここに帰ってきい」

「うん」

「いっちゃんには笑顔が似合うとる」

「……ん」

不意に、逸子の中で堪えていた何かが、堰を切って溢れた。

またここに来ればいい。

そう思えた途端、胸のつかえが音もなく氷解していくのを感じた。

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