ハルジオン。
洞穴に手を当てて目を瞑ると、あの時の会話が蘇るような気がした。

そう……

自分にもこんな時代があった。

昨夜のタイムカプセルよりも、ここでこうしている方が、よほど心安らかに昔を思い出すことができた。

「……悪かったかな」

達也は昨夜の百合子や靖之に対する自分の態度を思い出し、ぽつりと呟いた。

靖之は三人で飲みたそうにしていた。ホテルに泊まると言ったとき、「うちにおいでよ」と珍しく食い下がってきた。

それを「わりぃ」の一言で片付け、さっさと神社を後にしてしまったのだ。

いつもそうだ。

それでも靖之は、いつも笑って一言、

「いいよ」と言うのだ。

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