ハルジオン。
「言ったよね。強制送還だって」

「どういうことだよ?」

「つまり、今夜十二時までに辿り着けなかったら、元いた場所に送り返される」

「……それだけか?」

「それだけ」

「ふーん」

達也は呟き、鬱蒼と木々が生い茂る森を見回した。

昨夜の雨で濡れた木々の葉が、朝日に照らされて輝いている。

「迷惑な話、か」

確かにそうに違いなかった。

達也だって、別に来たくて来た訳じゃないのだ。本当なら今頃、東京に戻っているはずなのに……

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