ハルジオン。
「何やってんだか」

ポケットに両手を突っ込み、達也は一人ごちた。

森はどこまでも続いていた。

山道には違いなかったが、平坦な雑木林を歩くばかりなので、それほど足に疲れは感じない。

「なあお前、そのトランプも旅人にもらったのか?」

退屈しのぎに尋ねる。

「違う」

相変わらずアキトの返事は素っ気ない。

「……母さんにもらったんだ」

「ふ……ん。母さんか。今頃心配してんじゃないのか?」

達也はアキトの数歩後ろを歩きながら、その小さな背中に向かって問いかけた。

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