剣と日輪
 を真光社より、十二月には短編集、
「夜の仕度」
 を鎌倉文庫より発刊した。
 又昭和二十四年二月には講談社より短編集、
「宝石売買」
 を出版した。
 憑(つ)かれたように公威は筆を振るったが、何れも空振りに終わり、真光社は三月に倒産、鎌倉文庫も昭和二十五年に解散するに至る。
 公威の切り札、
「仮面の告白」
 も七月五日に河出書房より刊行したが、さっぱり売れなかった。
 八月にも、
「魔群の通過」
 を河出書房より発売するも、鳴かず飛ばずであった。
 公威は是まで、挫折知らずで来た。
「自分は失敗などしない」
 と過信して生きてきた。けれどもこの頃では、大蔵省に辞表を差し出した時分の勢いは萎(しぼ)み、
「辞めるんじゃなかった」
 と後悔する毎日だった。
「どうしたら、ベストセラー作家になれるのか」
 と怖慄(ふりつ)していた。
「日の本一の作家たれ」
 と梓に鼓吹(こすい)され、
「決して流行作家なんぞには、ならない」
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